住まいの延長として、静かに息づく庭を。
私たちが目指すのは、眺めるための庭ではなく、毎日の中で自然に存在する庭です。
朝起きて窓を開けたときに目に入る苔の緑。夕方に帰ってきたときに感じる木の影。雨の日に音を立てる落ち葉。
こうしたささやかな出来事が、住まいの空気を静かに変えていきます。
その土地にすでにあったもの、またはこれからそこに根付くものを丁寧に読み取りながら、過度に手を加えすぎない設計を心がけています。
庭は、住まいの一部として長くあるものです。だからこそ、木の成長や石の経年をあらかじめ想像した上で、控えめな手を加えることを大切にしています。
石、木、水、土。限られた要素をどう配置するかが、庭の静けさを決めます。
飛び石はただの通路ではありません。歩く人の視線と足の運びを少しずつ変え、庭の奥行きを体感させるための装置です。
木の枝ぶりや葉の質感、冬の姿まで含めて選びます。一本の木が一年を通じて異なる表情を見せることを意識します。
朝の柔らかな光、夏の強い影、夕暮れの長く伸びる影。時間とともに移り変わる光を、配置の大切な要素と捉えます。
現地を何度か訪れ、日当たり・風・土の状態を記録します。家族の生活リズムや、庭に求める静けさの度合いも丁寧に伺います。
大きな樹木や石の配置、動線の骨格をまず固めます。図面だけでなく、実際に現地で縄張りを行い、空間の広がりを確認します。
四季の移ろいを考えた植栽リストを作成。石材や木材も、その土地の雰囲気や既存の家屋に合うものを選びます。
丁寧な施工の後、最初の1〜2年は特に根付きや成長を見守ります。必要に応じて剪定や土の調整を行いながら、庭が自立していくのを支えます。
庭石は山から切り出したものではなく、近くの川原や古い庭から出たものを再利用することが多いです。経年で苔が生え、色が落ち着いていく様子をあらかじめ想定します。
デッキやフェンスには、できるだけ地元や近隣の気候に合う樹種を選びます。自然な風合いを残し、塗装は最小限に。時間が経つほどに味わいが増す素材を選びます。
土は現地のものを活かしつつ、排水と保水のバランスを調整します。苔は特に重要な要素。最初は薄くても、時間が経つにつれて豊かになっていくことを前提に計画します。
水は音や光を庭にもたらします。小さな手水鉢や、雨水が集まるわずかな窪みでも、庭の空気は変わります。大きな池は必要ありません。
いくつかの例を通じて、私たちの設計の考え方をお伝えします。
既存の大きなケヤキを残し、その下に苔と石を敷いた小径を新たに設けました。南側に小さなウッドデッキを置き、室内から続くように。夏は木陰で涼しく、冬は落ち葉が地面を覆う様子を楽しめる庭になりました。
「朝、窓を開けると土の匂いがしてくるのが嬉しい」
古民家改修に伴い、わずかな隙間に設けた坪庭。室内の座敷から見える借景として計画しました。モミジとサツキ、飛び石を配置し、季節の移ろいを小さく凝縮したような空間です。
「狭いのに、なぜか奥行きを感じる」